この理想を現実のものとするために、セラピードッグに対する理解とその受け入れ先の確保が必要となる。
福祉施設との協力・協同関係、密接な連携プレーが大切で、今回伊藤が行った提案は、この活動を是非とも支持してもらいたいという訴えかけであった。
この活動が受け入れられるかどうか、大変重要な第1歩でもあった。
この日の老人福祉施設連盟の役員会では、欧米や日本などで取り組まれているドッグセラピーの効果が説明され、今日集まった各施設でセラピードッグを導入してみないかと提案された。
もし受け入れ可能な施設があれば、日本レスキュー協会で訓練したセラピードッグを無償で譲渡提供するというのだ。
日本レスキュー協会の伊藤の熱のこもった説明に、心を動かされる一人の役員がいた。
永寿特別養護老人ホームの石井順一施設長であった。
説明会が終わった直後、石井は意を決したように、セラピードッグをぜひとも受け入れたいことを伊藤に伝えた。
施設の職員とも相談しなければならないが、受け入れは基本的には大賛成、施設側の受け入れ体制の問題もあるので、とりあえずは、セラピードッグに施設訪問してもらうということから始めたい。
その経過を見て、本格的に受け入れる場合には、どういうことが必要なのかを検討したい、などと申し入れた。
もし譲渡という話が出れば、当然のことながらお願いしようかとも考えているとまで伝えた。
石井施設長が、「独断」で伊藤にセラピードッグの受け入れの提案について結論を出したことにはわけがあった。
としている。