11:  悲しい知らせ

その後のアンの消息もわからず、一年が過ぎました。

その間、アンのような素晴らしい人に出会ったことをたくさんの人に知らせるために、実験動物関係の雑誌や関係者に話をする機会を何度か持ちました。日本が動物福祉の分野でどれだけ遅れた国であるか、ということも各地で話をさせて頂きました。

そんなある日、突然、名前も知らない方からの封書が自宅に届きました。

差出人はHさんという東京の方で、日本語の手紙以外にも英語の手紙と、以前私がある雑誌にアンの事を書いた訳文のコピー、そしてアンの写真が入っていました。

アンと親しくしていたHさんは、日本における数少ない彼女の理解者であったようです。アンのお母さんが私にあてて書いた手紙を親交のあったHさんに託し、わざわざ日本語に訳して送ってくれたものでした。

手紙を読み始めて、私は一瞬、足がすくんでしまいました。

「アンが死んだ!」

手紙の内容はアンの訃報通知でした。

生前、アンが世話になった私に、是非母親は彼女の訃報を知らせたいと思い、一生懸命関係者を捜したあげく、ようやく私のところに届いたというものです。

「アンが死んだ! あのアンが!」

私は何が起きたかをすぐに理解することができませんでした。

「ウソだろう!」とつぶやいても、その思いを打ちくだくかのように、英語の手紙が厳粛な事実をつきつけている感じがしました。

「どうして!」

私は、はやる思いで手紙に目を通しました。