74, 「竹楽器」

青少年育成に関係した地区関連のNPO法人の理事就任の要請を受けた。

理由は「佐藤さんが各地でギターの弾き語りをしているので、音楽関係が得意そうなので、是非、竹楽器を作って子供たちに指導して欲しい」ということであった。苦笑しながらお引き受けしたが、竹楽器作りがこんなに しんどいとは思わなかった。

理事長が私の自宅のガレージに多くの真竹を運んでくれたのは良いが、さて、この中から音の良いものを探すのは大変だと思った。成長が止まって良く乾燥した竹ならば完成後の音も変化しないがそれも見ただけだとわからない。ええい、ままよと休みの合間を利用して電動ノコギリや大工道具を出して、適当の大きさに切り出した。太さもまちまちだし、節も一定していない。一個作ってはバチで叩いて、その音を覚えておく。

例えばそれが「ド」の音ならば次は「レ」である。ところが何本切っても微妙に音が違うのである。結局、ドレミファソラシドの音階が全部そろったものを一式揃えるまで約50本の竹筒を作った。切り過ぎたら駄目なので、数ミリずつノコで落としていくが、それでも失敗楽器は山のように増えて行った。

楽器にも色々種類があって、節に合わせて高さを変えて作っていくものから節を残して真ん中に切り目を入れた竹太鼓のようなもの。また、適当に切った竹筒を同じ高さに揃えて何十本もの束にして竹シロホンのようなものまで挑戦した。

そうこうしていううちに、電動ノコの切り屑が喉に入ったのか、咳が止まらなくなり、おまけに熱まで出だした。医者に行くと白血球数が異常値を示し、強い炎症が起こっているので仕事は行くなと言われるし、竹楽器発表会に会わせて参加者に教える時期が迫っているだけに気が気ではなかった。

ようやく、熱も下がり、少し体調も戻ったのでまた、楽器作りに励んだが最終的は竹ホルンも含めてかなりの種類の楽器が完成した。それを持って、これも新しく出来たYMCAの施設で大阪府が管理を任されている「紀泉ワイワイ村」という飛騨高山にある合掌作りの家に似せた宿泊施設に設置しに行った。ワイワイ村は見た目は旧家作りであるが、障害者にも利用出来るよう工夫を凝らしてあり、五右衛門風呂から障害者用トイレまで設置してあり、食事はすべてカマドで炊いて食べる仕組みになっている。キャンプ施設も充実しており、テント泊も出来るようになっている。そういった施設の軒先につるしたり、地面に置いたり色々な楽器を配置して、ワイワイ村で行われるイベント(自然教室)に合わせて、参加者の指導を行った。

他の理事は竹とんぼや竹鉄砲を作って子供たちに配ったり、作り方を 教えたりしているが、私も合間を見て、竹コッポリ(高下駄のようで紐を 両手に持って歩く)や紙飛行機を作って配った。

この日は初めての竹楽器の発表会だったし、他の団体も尺八や踊り、歌などを披露しているため、私も趣向を凝らして参加者の方に竹楽器を配り、演奏を行う広場でまず見本を見せて、叩いた。

ある程度慣れて来た時点でギターを持ち出し、この日の為に歌詞を作り変えた 「ワイワイソーラン節」を歌いながら、その曲に合わせて楽器を叩いてもらった。参加者は面白かったのか、何度も何度もアンコールを頂戴したが、山々に響く竹楽器の音色は自然で素朴で本当に素晴らしいと思った。

近年、自然を素材としたものが再認識されているが、アフリカの原住民が叩いている木太鼓。東南アジアのバンブーダンスに合わせた竹楽器。南米インディオが使っている竹笛など皆、自然との調和を考えた楽器である。高価な楽器を買わずとも、日本の場合、竹林に行けばいくらでも素材は転がっている。失敗作でも良いから家族で一緒にそれらの楽器作りに挑戦すれば絆は深まると思うし、現に当日来られていた参加者は殆どが子供連れの家族で、お父さんやお母さんが一生懸命竹トンボや竹鉄砲、コッポリを作ってやっている姿を見ると、本当に微笑ましい光景だった。

作った楽器は多くの訪問客が叩いていくので、管理している職員は喜ばれていたが、すでに叩きすぎて壊れたものもあるらしいので、また、 時間を作って作成してみようと思っている。