70. 「要望書」

エッセイ69で本棚の整理中に懐かしい手紙が出てきたことをお伝えしたが、もう一点、懐かしい要望書も出て来た。

自分の立場もわきまえず、いきなり病院長に出した要望書であるが、真摯に私の気持ちを汲み取っていただき、当事の金額で500万円もの緊急予算を計上してくれた思い出の紙切れであった。

私への批判で「佐藤は福祉と言いながら、いったいどんな貢献をしてきたのか?」聞くことがある。いちいち、言い訳はして来なかったが、自分で出来る範囲でこのような無茶をして来た時代があったとだけは言っておこう。

大阪大学医学部附属病院長、川島康生殿

現在、東館屋上には実験用として常時、70~80頭の犬が飼育されております。しかし、その環境は非常に条件の悪いものであり、特に夏季、冬季の室内における温度差は大きく、飼育室としての適正を欠いております。その為、貴重な実験動物が実験に用いる前に死亡してしまう例や慢性実験中に死亡するケースも多く見られ、研究活動に 多大な支障を来たしております。現在、冬季の暖房方法として、天井吊り下げ型のガスストーブを用いておりますが、効率が悪く、消防法上も問題があります。

これらの問題点につきましては動物舎より研究連絡協議会に対して設備機器充実費の中から現在6機あるストーブのうち、故障しているものを除くと4機しか使えず、早急に増設する必要が生じたため、予算要求が出されました。研究連絡協議会ではこれを受けて検討した結果、夜間等において無人の状態でストーブを使用することは事故に繋がるとの見解で、現在使用しているストーブについても使用禁止の処置を取るとともに動物舎に対しても要求の再検討を促す指示が成されました。

以上のことから、動物舎では庶務係を通じで施設係と相談した結果、ガスストーブに代わるものとして暖房機を設置するために工事費を試算したが見積もり予算が200万円という答えが得られため、再度、研究連絡協議会に打診しましたが、むしろ、これらは犬を扱う利用者(研究者)に委ねるべきとのことで、急遽、生理研利用者世話人会が開催された。

利用者会では当面の方法として、動物委員長宛てに要望書を提出することとして、その作業を行うために研究連絡協議会に具申し、問題提起を行ってもらうよう、要望いたしました。このような経緯において具体的な予算の無いことから、冬季の暖房については何ら改善がなされないどころか、従来のガスストーブも使用できない状況に至ってます。

12月に入り、夜間の気温も低下し、このままでは動物の飼育は困難となり、種々の問題が生じて来るのは必須です。動物倫理上、社会的にも注目されている本学の現況を鑑みて、早急に対策を講じなければなりません。

以上のような状況におきまして、誠に僭越ですがここに要望書を提出させていただくものであります。諸般の事情を考慮して、ご配慮くださいますよう、お願い申し上げます。

*飼育担当の管理者でもないのに、いらぬおせっかいかも知れませんが 元、先生の

  所で実験助手をしていた佐藤の個人的願いでもあると思って、どうかご無理を聞い

てください。

                       共同研生理実験室 佐藤