25.「新年に寄せて」

毎年、年末から正月にかけて、新たな気持ちにさせられるのだが、休暇も終わっていつもの生活が始まると、その新たな気持ちは何処へやら。日々の多忙にかまけて、つい、無為に過ごしてしまっている自分がいる。

十大ニュースなんかをみていると、こんなこともあった、あんなこともあったと思い出しながら反芻するが、本当に暗いニュースばかりで一人、日本の将来を憂いてしまう。確実に戦争に向かっている現実に対して、本来は戦争反対の立場を取って来た文化人と呼ばれる方々もテレビでしきりと、北朝鮮の横暴に対して先制防衛策を唱えているし、政治家も憲法改正論を平気で述べるようになってきた。国民の大多数が犠牲になった先の大戦のことは忘れられて久しい。後方で指揮を取る者は生き延び、前線で働く兵士やひっそりと暮らしている国民が家族とともに死んで行った現実は何処へ行ったのだろう。我が家にも適齢期の息子がいるが、このままだと、いつ、徴兵制を敷かれるかわからない状況である。メディアもそういった危険な雰囲気については言及せず、むしろ、ひとつの拉致事件をきっかけにして、国民感情をあおるような行動ばかりしているように思えて仕方が無い。恐らく、北朝鮮に残された家族が処刑されたり、日本人乗客が乗っている飛行機が国籍不明の戦闘機やミサイルで攻撃され、墜落するようなことがあれば、即、戦争勃発の危機は充分熟していると言えよう。近い将来、こんなことも書けない時代が来るかも知れないし、心では思っていても口に出すと「非国民」扱いされる昔の時代に戻るかも知れない。

これからの日本を支えて行く若者に有形無形の財産を残すことも無く、公害、不況、失業、人間不信、老人介護などの負担を強いた上、戦争となると、一体、これまで犠牲になって死んでいった人々にどんな言い訳をするのだろう?