11月2日(土)、大阪市内のドーンセンターで講演をした。そもそも、農水省に勤務されていた獣医師の冨澤 勝先生が出版された「日本の犬は幸せか」という本の中に小生とアンのことが書かれてあったのがきっかけになった。それをご覧になった日本レスキュー協会の方から連絡を頂戴し、是非、協会の動物愛護フォーラムで講演をして欲しいと言われた。一人でも多くの日本人にアンのカタカナの墓碑のことを理解して貰いたいので講演を了承した。
再度、ホームページ上にある「カタカナの墓碑」をご覧になって頂いた後、何度も事務局とメールで打合せをして公演当日を迎えた。会場は大阪市内の天満橋にあり、定員500名という立派なホールであった。午前9時半に会場に到着し、控え室で関係者の方とご挨拶をした後、持って来たスライドの準備をする為、映写室に入り、係りの人のお世話で試写した。午前10時50分に来賓の挨拶が終わり、予定より10分早く、小生の講演が始まった。練習も何もして来なかったので最初はドキドキしたが、話し始めると意外と落ち着きを取り戻し、小生が働いて来た、37年間の大阪大学での実験動物の歴史を話すことが出来た。
会場はほぼ満員の状況で、ちらほらと知人の姿も見えた。メモを取っている方、真剣に聞いている方、手にハンカチを握ってアンの凄絶な生き方に感動を覚え、涙を流している方など、全員がこの講演に大きな興味を覚えて来て下さったのが演台にいる小生に伝わって来た。
一時間という限られた範囲で話を進めなければならないので、言いたいことはいっぱいあったが、あっという間に終了時間が来た。あとから考えるとあれもこれも忘れていたという状況で、伝えたかったことが参加者の皆さんにどれだけ理解して貰えたかが心配であった。知人、友人は「良かったよ」「やっぱり生の声で聞くのは良い」などと言ってくれたが、このホームページに訪れたことのない方からの意見も聞きたかった。講演の後に行われたパネルディスカッションも出席を要請されていたので、昼食の後、再び舞台に上がり、並べられた机と椅子に座った。
冨沢先生を含む、動物福祉運動家やブリーダー、ペットショップ、ドッグフードの販売を手がけている方が壇上に上がり、司会のレスキュー協会理事長の進行でそれぞれの立場から意見を述べた。
小生はすでに講演を終えている立場なので、皆さんの意見に対してのコメントを求められただけで、言い足りなかったことに対しての意見は述べることが出来なかった。会場からのご意見も伺った後、ディスカッションは終了したが、自分の仕事以外の立場の方からのご意見を拝聴して、色々な意味で疑問点や本音の話も聞きたかったと思った。
今回の講演依頼は実験動物関係以外では初めての経験だったが、講演の専門家でもない、研究者でもない、一技術者としての講演に際して、こんなに多くの一般の方が参加してくれたことに対して、本当に嬉しかった。改めて、「動物福祉」の関心の深さが問われた講演であったが、それだけに自分に与えられた責任感の重要性が身に染みて感じた一日であった。