18:  実験動物の環境改善

昔から、動物実験に反対する人たちと、動物実験は人類の健康と福祉のために欠かせないものとする人たちとの間で、長い間油と水のように交じり合おうとしない対立が続いてきました。

今でもそういう問題は残っていますが、目線を動物福祉に向けたとき、お互いの関係が徐々に修復されつつあります。

それは動物に対する福祉の考え方が世界的にも浸透し、実験する側の状況が大幅に変わってきていることが証明してます。

専門家の間で、「3R」と呼んでいる代替法があります。

できる限り動物を実験に使わないという考え方で、1959年にイギリスの学者たちが提唱したものです。

  1. 動物を用いない方法 (Replacement)
  2. 動物使用数の軽減 (Reduction)
  3. 動物たちの苦痛の軽減(Refinement)

つまり、動物をできる限り使わない、動物たちの痛みをできる限り軽くする、そして、コンピューターによるシミュレーションや人工的動物、器官などを使って、動物そのものを用いない方法を工夫し、採用するということです。

1970年代には、イギリスとアメリカで代替法について大きな会議が持たれ、90年代には一定のガイドラインが作成されるようになりました。その後、世界中で代替法を開発したり、促進したりする動きが活発となり、そのための研究機関なども設立されるようになってきました。

さらに最近では、責任 (Responsibility)という項目が付け加えられて、新たに「4R」と呼ばれるようになっています。動物実験を行うにあたって、責任の重さを認識するという意味です。

これは、何十年も前にアンが実践してきたことであり、その精神の継承ともいうべきものです。

このように、ここ数十年の間に実験動物のための環境改善の動きが大きく変化してきたのは、世界的な規模での実験動物関係者らの努力が実った成果だと思います。

現在日本でも、実験動物関連学会や一部の獣医学関連の学生たちが、「3R (4R)」を推奨実践していますが、まだまだ一般の研究者に浸透しているとは言い切れません。すべての実験代替法を用いることは不可能ですが、これから取り組むべき大きな課題だと言えるでしょう。