多くの実験動物施設では犬の飼育ケージはステンレス製のケージで作られており、多数を飼育する為に二階建ての構造になっている。二階建てにしている理由は「日本は狭い国だから、このような構造でないと、多くの犬は収容出来ない、そして、予算上からも一匹の犬にそれほど経費はかけられない」という答えが返ってくる。本当に日本は狭い国だろうか?ならば、実験動物福祉先進国の英国やスイスはどうなんだろう?国土の大きさも日本と同じか、その半分もない国だってある。そういう国でも、いわゆるペン型ケージと言って一階建ての独立ケージに収容されているのが現実だ。広さも中に飼育関係者が入って立ったまま清掃作業ができるようになっている構造だ。
犬を二階建てのケージに移送すると、慣れるまで怖がってブルブル震えている。飼育施設内で生まれ育った犬は別にして、多くは違った環境から連れて来られて、いきなりこのような環境に晒されたら、生理学的にも問題が起ころう。まして、飼育関係者が移動式の架台に乗って清掃作業をするにも大変危険だし、実験の為に上げ降ろしする時も危険を伴う。
犬は元々、広い場所で飼い慣らすのが理想であるが、せめて飼育環境の一元化を計る際は動物本来の特性を考慮したものを模索するのが実験動物関係者の責務ではないかと思う。
カナダのオタワ大学にあるローゼル教授室では、室内に実験犬が自由に放されているビデオを見たことがある。床には木屑が並べられており、そこかしこで眠ったり遊んだりしている犬を見た時に日本の現状とのギャップに驚いたものだ。