セラピードッグ・メディカルセンター

日本レスキュー協会では、社会的な要請を受け、協会本部の移転新築に際して「セラピードッグ・メディカルセンター」(協会本部に併設)を新設する計画が進行中だった。

毎年、数多くの犬が心ない飼い主たちに捨てられ、その数は全国で20万頭にもなる。

協会では、こうした行き場のなくなった捨て犬の中から適性のある犬を引き取り、セラピードッグとしての訓練をして、特別養護老人ホームや身体障害者福祉施設といった社会福祉施設など、主旨を理解し希望してくれる施設に無償で譲渡していくことを計画していた。

そして、この計画を進める中で、人と共生する犬の命を大切にする運動を広げていくこともその目標として掲げていた。

それだけに協会としては、今回の様に、O大学の動物実験施設からどの犬をセラピードッグとして選ぶかに、一人一人大きな責任を感じていた。

O大学側が予定している処分の日まで、 間近に迫っている。もうあまり時間がない。一刻も早く結論を出さなければならない状況であった。

佐藤からも、引き取りの結果を確認する電話が入ってきた。

「もう時間がないんです。 僕も知らないうちにどんどん犬が減っているんです」

犬の管理責任は研究者個々人にある。そのため、佐藤の知らないうちに研究者の判断で犬たちが処分されているのだった。

研究者が処分できない犬については、すでに佐藤に手続きを依頼してきている。

一刻の猶予も許されなかった。