佐藤はさらにこう続けた。
「もし1頭でも、あなた方に引き取ってもらうことができたら、おそらく全国でも初めてのケースになります。処分される予定の実験動物の生命が助けられ、社会のために、そして、苦しんでいる人々のために役に立つのは。
現在の日本では、環境の悪い場所で実験されている動物たちがまだまだたくさんいます。
そういう意味では、今回のことは、動物福祉について考える大切なキッカケになると思っています。
一般に実験用として飼いならされた犬は、他には使い物にならないという考えが動物実験の現場にはあります。
だから、最後には、殺処分という手段が取られるのです。
それは間違っています!
今度のことは、そういう誤った考え方を変える絶好のチャンスなんです!!」
部屋には、50個のケージがあるが、犬がいつも50頭いるとは限らない。平均して15~30頭ぐらいがいつも収容されているので、今回、12頭を処分しろというのは、かなり大きな頭数となる。
淀みなく、次から次へと動物福祉のことについて話をする佐藤を見て、倉田は、「この人は、うわさ以上にすごい人なんだな」と感じた。